横浜ベイスターズを好きな作家…保坂和志
保坂和志『カンバセイション・ピース』、新潮文庫。
年齢と顔が似ているからか、村上春樹(スワローズのファン)と間違えられることもあるという保坂和志。
しかも、作家になる前は、西武デパートのカルチャーセンターの担当者だったという。
そう売れている作家ではないが、評価は高い。
横浜スタジアムで、ベイスターズを応援する主人公らしき男性。
ロバート・ローズ選手は、ファンの間で大変人気だったという。
そのローズへの「胸に熱いものがこみあげてくる」中で、亡くなった猫のチャーちゃんへの想いが交錯する。
こんな小説には、初めてお目にかかった。
以下、本文より抜粋。
61p
「 つづく4番は当然ローズで、ローズに対する私の気持ちはもうファンという状態を超えて尊敬にちかい。
昔怪傑ハリマオを好きだったように心酔していて、年々筋力アップして、いまや鎧になったような上半身を、バッターボックスでググっと広いスタンスで支える姿を見ているだけで、胸に熱いものがこみあげてくるのを感じる。」
288p
「 ローズのいないグラウンドに向かって『ローズ!』と叫びことはできないわけだが、チャーちゃんが(略)いない家や空に向かって『チャーちゃん』と言った。」
「必ず『ニャア』と返事をして、それが可愛くてかわいそうでしょうがなかった。
球場の上の墨色の空をゆっくりと雲が流れていた。」
「『ローズが引退したショックで熱を出した』
と、私が寝ている枕元で笑い、全然野球がわかっていない森中がそれに同調して、
『内田さんにとって、野球って何なんですかぁ、一体。教えてくださいよ。
ローズって、そんなに偉大な存在なんですかぁ?
おれの友達にも岡田有希子が自殺したときに、ショックで一週間小学校休んだヤツがいましたよ』
というのを、話としてはおもしろいから否定しなかったけれど、この結末は落胆するどころか腹が立つだけで、最終戦のあと夜遅く前川からかかってきた電話を聞きながら、ローズがいない球場で、ローズを抜かした選手たちが、ここにいないローズを思って涙を流すというチンケなメロドラマの一員にならなくてすんだことを誇らしいとさえ思って、
『ローズがいない空間に向かって流す涙なんか、おれは持ってない』と、痛い喉で前川に言ったけれど、くやしいことに前川の話を聞いているだけで私はそのときの球場の光景がまざまざと浮かんできてしまって、結局私自身もそこにいたのと変わらない満足感さえ得てしまっていた、」
プルースト、保坂和志
保坂和志、カンバセーションピース
https://hiko1985.hatenablog.com/entry/2020/05/18/000000_1
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